ちょっと古いが「日経パソコン」の2007年3月26日号が出てきた。そこに野間俊彦先生の記事が出ていた。タイトルは「ICTで学力が向上」はホントの話。
今年1月24日教育再生会議が第一次報告を提言した。余談だが、公教育に携わる立場としては、教育再生会議が言う「公教育の再生」という言葉にはとても違和感がある。「再生」というのは、死んだものを生き返らせるという意味だ。だが、公教育は決して死んではいないと思っている。子どもたちの成長のためにがんばっている学校や先生たちを筆者はたくさん知っているからだ。
それはさておき、教育再生会議の報告では学力の向上が一つの柱になっている。ところが残念なことに、この報告の中には学力向上の方法としてICT(Information and Communication Technology)の活用が唱われていない。教育再生会議は法律さえも変えるというほどの勢いがあるので、ぜひICT活用を入れてほしかった。
「わかる授業」をつくるのだ
教育再生会議の報告と前後して、ICT活用で学力が上がると実証した研究が報告されたので紹介したい。今後のICT活用推進の根拠となる貴重な実証研究だ。
国が進める教育の情報化には、@子どもたちの情報活用能力の育成(情報教育)、A各教科などにおける先生や子どもたちのICT活用(ICT活用教育)、B校務の情報化、の3つの柱がある。この研究で取り上げているのは、AのICT活用教育である。ICT機器を使って教科などの指導目標の達成度をより高めることが狙いだ。授業の中で、先生がプロジェクターや大型テレビで小さなものや手元を大きく映したり、体験できないものをシミュレーション映像で疑似体験させたりする。子どもたちは、コンピューターやインターネットで調べたり、他の学校や専門家などと交流したりする。ICT機器を使って、「わかる授業」や「魅力ある授業」をつくるのだ。
テストの点も達成感もUP
その研究は、文部科学省の委託を受けて独立行政法人メディア教育開発センターが全国の小中高344件の授業において、ICTを活用した学級と活用しない学級の調査結果を比較して検証した(しない学級には後で使用してフォローしている)。
使用されているICT機器は、頻度の高い方からコンピューター、プロジェクター、インターネット、電子情報ボード、デジタルカメラ、実物投影機、スピーカー、CD、スキャナー、プリンターの順になっている。電子情報ボードとはタッチパネル式の大型テレビで、パソコンを接続すれば、画面をタッチして操作ができる。実物投影機は、台面に置いたものが画面に大きく映る機器だ。
ICT機器が活用された教科は、小学校では理科、算数、社会が多く、中学校では技術・家庭、理科、数学、高校では情報、数学が多い。これらの教科でICT活用の場面を設定しやすいということだろう。面白いことに、実践の数は小学校が圧倒的に多い。小学校では担任が多くの教科を持つので活用の場面が多いからだと思われる。
どの教科でも、ほとんどの授業でICTを活用した学級の方が活用しない学級よりテストの結果が上がっている。特に中位層と下位層に効果が高いことが注目される。ただ、なかには全く効果が上がらなかった場面もある。何でもかんでもICTを使えばいいのではなく、やはり向き不向き、適材適所があるということだ。
学習意欲や達成感については、どの授業でも活用した学級の方が高い数字が出ている。授業の導入部分での活用が1つのポイントになるだろう。
なお、本研究の報告書のPDFファイルは次のURLでダウンロードできる。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/07/06071911/001/001.pdf
教える側の尻をたたけ
残念なことは、この研究結果のようにICTの活用で学力が向上すると数字を挙げて話しても、黒板とチョークだけで十分にいい授業ができると思い込んでいる先生は、やっぱり使わない。ICTを活用する授業というのは、自分の授業を改善しようという向上心がないと成立しないのである。向上心がない先生は、ICTだろうが何だろうか、なかなか動かない。そういう先生を刺激する意味でも、教育再生会議の報告でICT活用に一言触れてもらいたかったのである。
自分の指導がなっていないのを子どものせいにする・・・よく見られることだと思いますが、これでは事態はよくなりません。子どもたちができないのは自分の指導がなっていないからだというスタンスで考えないと、子どもたちの向上はありません。(というか、実際、教師の責任だと思います。)
また、ICTが理数系で使われているという内容は、理数系で使いやすいのではなく、使う教師が理数系の方が多いのではないかと思っています。